資産はますます富裕層に 預貯金大国は相変わらず

【今週のマーケットエッセンシャル】第60号(2023年3月22日公開)

主筆・前田昌孝(元日本経済新聞編集委員)

米国に比べれば「偏在」と呼ぶのは早すぎるが、日本でも富裕層への金融資産の集中が過去最高になったことが野村総合研究所の最新調査で明らかになった。それでも日銀の資金循環統計によると、新型コロナウイルス下の過去3年間で日本はますます預貯金大国の色彩を強めた。在宅勤務による「巣ごもり投資」などはごく一部の現象だったかもしれない。まだ株式で資産を形成できるような国にはなっていないのだ。

野村総研は2年に1回、世帯の純金融資産(金融資産から住宅ローンなどの負債を差し引いたもの)を基準に、全体を5つの階層に分け、それぞれの階層の世帯数や純金融資産保有額を推計した結果を公表している。3月1日に公表した最新版は、2021年時点の状況をまとめたもの。それによると、純金融資産を5億円以上保有する超富裕層と、1億円以上5億円未満を保有する富裕層の合計世帯数は148万5000と過去最高を更新し、これらの世帯が持つ純金融資産も364兆円と、過去最高だった前回(2年前)調査の333兆円を31兆円も上回った。

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