老後資金問題4年目の功罪 ショック療法が行動変える

【今週のマーケットエッセンシャル】第73号(2023年6月21日公開)

主筆・前田昌孝(元日本経済新聞編集委員)

いわゆる「老後2000万円問題報告書」が2019年6月3日に公表されてから4年がすぎた。政府関係の報告書など大半が忘れ去られるなかで、いまだに折に触れて話題になる点では、横綱級のヒット作だ。依然としてネット上に老後不安をあおる記事があふれていることには閉口するが、さまざまなデータをつぶさに点検すると、報告書は日本人の行動を変えるショック療法の役割を果たした。

報告書は正式には「高齢社会における資産形成・管理」という表題が付いている。まとめたのは、金融庁の金融審議会市場・ワーキング・グループ。表題や目次部分を除いて51ページあるが、とりわけ注目されたのは21ページの「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万~2000万円になる」という部分だ。

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