インフレでも個人躍らず 統計に映る不都合な真実

【今週のマーケットエッセンシャル】第74号(2023年6月28日公開)

主筆・前田昌孝(元日本経済新聞編集委員)

「預貯金ではインフレで損をしますよ」。金融商品を販売する人たちから最近、よく聞くセールストークだ。しかし、日銀が6月27日に公表した2023年1~3月期の資金循環統計をみると、物価が勢いよく上昇し始める前の2021年末に比べ、個人の上場株式や投資信託の保有額はむしろ減っている。岸田文雄首相が推進する資産所得倍増プランも絵に描いたもちに終わる可能性がある。

日経平均株価は5月に入って上昇の勢いを強めたから、直近の状況は3月末時点の数字より多少はましかもしれない。なにしろ資金循環統計によると、3月末時点の個人金融資産の残高は2042兆8303億円と、2021年末の2036兆9601億円に比べ、わずか6兆円しか増えていない。

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